2004
11.28

Vol.18-2「上海フィールドスタディ2004」

けんぞう見聞録


□日時:2004年11月20日(土)~23日(火)
□中国:上海市
□上海フィールドスタディ2004


昨年初めて訪問して、大いに刺激を受けた上海フィールドスタディですが、今年は現地での中国人参加者も含め総勢29名で「上海」の今を体感してきました。今年のツアーで最も印象に残ったキーワードは「倍々ゲーム」です。日本ではしばらく聞く事のなかったこの言葉。上海の企業を訪ねると各社の総経理が「業績は倍々ゲームです」と答えてくれました。う~んなんかシビレル言葉ですよね。では2004年レポートもじっくりお楽しみください。謝謝!


「上海企業事情」編

1.中欧国際商工学院/MBAビジネススクール

学生の前田清宏さん(日本人)山元江梨子さん(日本人)張さん
94年にEUと中国政府により、中国でのビジネスリーダーの育成を目的として設立されたMBAのビジネススクール。大学卒業後2年以上の実務経験の経て入学ができるが、学生の平均的な実務経験は6年である。1学年126名で海外からの留学生は19%女性は30%。平均年齢は29.3歳で施設内には図書館、食堂、体育館、寮そしてゲストの宿泊施設まで揃っている。学生達は授業の他にもクラブ活動としてアントレプレナー、マーケティング、ソーシャルベンチャー等自分の興味のある分野に取り組んでいる。日本人がここで学んでいる事に大いに刺激を受けた。


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2.半導体産業新聞/情報出版

特派員の黒政典善さん(日本人)
中国の凄さは「広さ」「スピード」「多様さ」であり13億の人口がいるがすべてに物を売ろうとしても物流がないのが現状である。所得の幅においても平均値が役に立たないためターゲットを絞り込んで販売する事も難しい。日本は中国を脅威と感じているが、組み立て工場としての価値は高いが、技術開発の部分では日本企業に勝てない。中国人も日本製品には高い評価をしており「メードインジャパン」はまだまだブランドである。上海人の所得水準がどんどん上がっているので、次は家電量販店が登場すると思われる。

3.上海交通大学TLO/大学

国際部日本担当の陳偉中さん(理学博士)
中国の大学は9年前から独立行政法人であり、教授が作ったベンチャー企業は20社以上あり、上場企業も4社ある。大学の予算の7割は大学独自の収入で賄われている。上海交通大学TLOでは国家技術の移転をテーマに中国企業と日本の大学や企業との橋渡しをしている。欧米ではなく日本と密接な関係を持っている理由は「近い」「ビザが不要」等であり、世界市場が注目している上海に近い日本は欧米の企業より高いアドバンテージを持っているとの事である。


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4.上海JETRO/貿易振興団体

所長の丸屋豊二郎さん(日本人)
中国企業の日本への関心事は「技術を持った中小・中堅企業のM&A」「力のあるセットメーカーが日本での拠点を作る」「力のあるソフトウェア会社が日本での拠点を作る」「MADE IN JAPANブランドを得たい」等であり、まさしく日本が進出していた時代を終え、中国企業が日本に進出する時代に入っているものの、中国企業はマネジメントレベルが低いため対日投資は上手くいっていないのが、現状である。
一方、中国国内でもファッションなどは上海ブランドの評価が高いため、メーカーも最終行程の拠点を上海に作り「MADE IN 上海」として全土に販売している。すなわち「上海を制するものが全土を制する」のである。


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5.OMNI PLASTICS/EMSメーカー

国業務拓展部技師の孫健さん
96年に設立され世界の大手メーカーを顧客に持つEMSメーカーで、売り上げは3700万$。従業員は2300名。競争優位の源泉は「品質」であり、ドライヤー等簡単な行程の商品なら部品の納品ではなく、最終パッケージまでをトータルに受注している。プレステ2のコントローラやマックのボディがサンプルとして展示してあった。「品質以外の差別化は?」という質問に対し「顧客の問題はそのまま自社の問題として一緒に考え行動する」という答えが返って来た。見習いたいものである。


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6.上海創価有限公司/人材派遣

副総経理の金鋭さん
金さんの会社には昨年も訪問したが、あきらかに大きく成長していた。拠点が増え業績は「倍々ゲーム」で伸びているそうである。現在は1500社(80%は日系企業)に向け3万人の登録者から必要な人材を紹介している。また中国における人事労務についてのコンサル業や研修事業も行っている。これまで欧米企業は若手の実力者を本社から送り込んできたのに対して、日系企業は年配の部長クラスを上海に送り込んで来た。しかしスピードの早い上海では遅い意思決定では勝ち目がないので、最近は日系企業も30~40代の若手実力者をどんどん上海に派遣しているそうである。


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7.ハイテクパーク慧谷/インキュベーション

副主任の張梅さん
上海交通大学関係のベンチャー企業が数多く入居しているハイテクパークで「企業と起業家の育成」「各種申請のサポート」「国際交流」等のサービスを提供している。
施設内には171社登録されており、70%はIT関連企業である。ここに事務所を構えるピナクルテクノロジー社の楊波さんによると、低いイニシャルコストで開業でき社員へのトレーニングプログラムが充実し、顧客との接点が広がる事がメリットであるとの事であった。


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8.フーシャンメディア/ゲーム制作

総経理の張偉京さん
86年に東工大に留学し日本の研究所勤務を経て96年に起業。日本人向け中国語コンテンツやアニメゲームを制作している。中国でも25~26歳以下の世代は日本のマンガ文化を受けており今後は親も子も喜ぶようなソフトの制作を目指している。10年後はテレビ、出版、ゲーム、等をチャネルにした総合メディアカンパニーになる事が夢だそうですが、まだまだ中国では競争相手が少ないのでスピードと質できっと実現されると思いました。


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9.上海康索特信息科技有限公司/情報サイト運営

総経理の吉田基さん
現在は情報サイトの運営や不動産間取図制作また企業の信用調査などの事業でご活躍されていますが、最初の合作事業での失敗談をお話いただきました。中国企業との合作事業においては「売上債権回収」「社内指示系統の混乱」「分配金や経費の自己負担」等が要因となり廃業。中国でビジネスを始める人へのアドバイスとして「明確な進出目的」「明確な商品戦略」「中国独自のビジョン立案」の三つを教えていただきました。吉田さんの会社が運営する上海情報サイト「しらべチャイナ」はこちら。
http://www.shirabechina.com/


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10.上海朋雅美時装有限公司/縫製工場

総経理の張国武さん
94年創業の縫製メーカー。日本の丸紅やイオンまたフランスやアメリカの企業を顧客に持ち、子供服を主に紳士、婦人、ベビーまで幅広く生産。国内では自社ブランドの子供服を企画して販売している。工場内では生地の編みたてから刺繍、プリント、縫製、検品まですべての生産ラインを持つ。検品ラインの責任者が「検品は目を離すと仕事にならないので絶対顔を上げないように教育している」とコメントしていた通り、彼女達は我々がぞろぞろと工場に入ってもいっさい視線を上げずに検品作業をしているのが印象的であった。


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11.宝山製鉄ソフト会社/ソフトウェア

海外事業部駐日代表のゴン継東さん
中国を代表する宝山鉄鋼のグループ企業で日本の新日鉄ソリューションズのような存在。売上は12億元(約180億円)。主にソフト開発事業を行っており、こちらの会社も業績は「倍々ゲーム」との説明であった。市場としては鉄鋼が売り上げの6割であるが最近は交通分野及び金融分野が成長しているそうである。08年の北京オリンピック。10年の上海万博に向けまだまだ需要が拡大しそうである。


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12.上海浦東軟件園/ハイテクパーク

副社長の程峻さんとマーケティング本部マネージャーの周國強さん
上海浦東ハイテクパークの中のソフトウェアパーク。国内外多数のIT企業が入居し約8000名がここで働いている。まるでキャンパスのような敷地の中に大食堂やコンビニも完備されている。我々もここで8元(約120円)のランチを食べ空港に向かった。中国は人、物、金、情報を集約し活用するのがうまいと感心した。


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